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「明日へ続く光(仮)」7~GSD#50自己補完小説

艦全体は騒然としており激しく人が行きかう。特に医務室周辺は雑然としていた。戦いによるエターナルの負傷者・それから戦闘停止後に救助されたと思われる負傷したザフトやオーヴの兵士が運び込まれてきているのだった。
どこも混乱している。
AAもそうだろう、ザフトもそうだと思う。そして人類全体も混乱していくだろう。
議長の示した「デスティニープラン」は発動されている、それを支持する人もいるかもしれない。
これからのプラントの出方によっては世界はまだまだ議長が言ったとおり混迷の時代が続くのかもしれない。
だがそれがどんな形でどういう風になるか予測など誰もできはしない。
戦いがこのまま続くかどうかでさえ、今は判らない。
だが、そんな世界を作らないためにキラは「戦い続ける」と覚悟した。
キラだけではない、ラクスもカガリもきっとアスランもそう決意しているはずで勿論AAの皆もだから、同じ理想のために、戦いの無い世界のために前を向いて目標に邁進できる仲間がいることは何よりの支えだった。


廊下へ出てその喧騒の中、2人は無言でお互いの腹を探り合うように見詰め合った。
話さねばならない、しかしこの場ではお互い納得いくまで話はできないと判断してどちらからともなく無言で歩き出した。
着いた先はエターナルの展望室、そこからはメサイアの崩壊した一部分が浮遊している様子が伺えた。殺伐とした空間が視界に飛び込みただ空しさが去来した。
そこから見る限りにおいて戦闘行為は停止され各国の艦艇が事態の収拾に奔走しているようだった。このエターナルもそうだ、同時にできる限りの救出救援もエターナルは率先して行っている。
目立つ艦であり、皆明確に口にしないまでもこのエターナルに搭乗する彼女が”本当の”歌姫であると理解し敬意を表しているようにも感じられた。実際縋るように付き従うものもいるようだった。
しかしまだ事態は予断を許さない。
2人も本来はまだ陣頭指揮に立つべきであるが、今はお互いの感情が優先だった。周りの状況に呼応して対応していくことまで気が回らない、というのが本心であったのだ。心が波立ったまま思考が先へと進まない、そんな感じだった。

いうなれば戦闘時の興奮もまだ冷めやらぬ、アスランはその上疑問と憤りを抱え二進も三進もいかない。ましてキラ自身余裕が無いように思えるのにあのレイに優しく振舞えるそれが一番堪らなかった。何があったのかを詳しく聞くまでは納得いかないと、仏頂面を隠そうともせずキラをねめつけた。
だが、言葉を紡ぐことはできないでいた。
キラとレイが同じ空間にいる、その違和感もこれまでのレイの行動からは信じられない光景で、いつも毅然と正論を吐くレイの憔悴振りも信じられなかった。そしてレイを庇うようなキラ、そのことについても衝撃だった、何がどうしたのかと戸惑うばかりだった、なのに先ほどのレイの様子から、レイが議長を撃ったらしくそのことが結果的に議長を破滅に追いやってしまったらしいと分りさらに驚愕を受け隠せなかった。
キラが会いに行く、といった時には相容れなき場合はどちらかの死をもって事態は動くと考えていた。キラが彼を撃つかもしれない、もしくはその反対がありえた、その事態こそを恐れた。しかしキラは無事に帰還した、その事実が意味するものを神妙に考えていたのだ。
だが違った。


『許しませんよ、ギルを裏切るなんて』
『また逃げるんですか』

そう叫んだレイの声を、表情をまだリアルに思い出せる。あれほどまでに頑なに信じていた人を、彼は撃ったというのか?

(それが本当なら…)
と思うと、もう一つ頭を掠める思いがある。
この出来事を知れば議長を信奉していたレイに信頼の重きを置いていた彼はもっと混乱し怒りを爆発させるのではないかと思わせる。
先ほどの戦闘でジャスティスで撃墜に追い込んだ後輩のことが頭をよぎった。

やるせない思いに握った拳が震えるのを自覚した。


一方キラは冷静になるように心がけていたせいか、自分の起こした行動から考えられた様々なこと、憶測、それに対する思考を頭の中で冷静に分析している自分に気づいていた。
議長と対面したこと、その内容は後味が悪く何ら歩み寄りも無い実りの無いものではあった。しかし彼もまた求めていたのは平和、だったのだろう。方法やそこまでの過程は遠大すぎてそして納得いかないものではあったが、世界を戦争で破滅させようとしたものではないのだと解った、平和へのアプローチの方法論の違い、なのだ。だが受け入れることなど出来はしない。話も平行線だった。
まるで人を信じていない、そんな口ぶりに幻滅したのも確かだった。
彼が頑ななまでに人の感情を信用せず、管理統制された世界を作りたかった理由ははっきりとは解らなかった。がレイに向けたあの瞳、タリアに向けたあの言葉がデュランダルという人がまた孤独であったのかもしれないと思わせた。望んでもいないのにそうなってしまったのかも知れない、孤独に耐えられない何かがあったのかもしれない。そのことが逆に彼を追い詰め、人間の本質は遺伝子で決められているのだと考え及ぶ原因になったのかもしれないと思ったのだ。

淋しかったのかもしれない。

そんな風に行き着いて、それでもやはり同情はできなかった。
世界を混乱させた、それは自分にも責任はある。
だが人としての当たり前の夢や希望を望むからこそ戦った、それを生まれながらに決めてしまうそんな思想を受け入れれば人として生きることすら捨てなければならなかった。反対するものは力でねじ伏せ、その強引な手法も許せなかったから銃を向けたのだ。
”力”を否定しながらも。

キラにはアスランが混乱している分だけ落ち着いてきたのかも知れないと思いつつまだ頭の中を錯綜する思いに一区切り入れるために大きく息を吐く。
そして彼を見返した。
表情は硬く眉間にはくっきりと不快な皺が寄って瞳の色は鈍く傷ついているように見えて、歯を食いしばる唇はへの字で、秀麗な顔も今は面影も無いほど苦悩が表れていた。
泣くのを我慢しているのかもとキラはそっと食いしばる頬に手を伸ばした。

「アスラン」
そっと頬を撫でた。
その手を強く握り返される。
食いしばる歯をギリ、と噛むのが伝わった。

そのまま言葉が出るのを待った。

お互いの情動の矛先に決着をつけねば先には進めないのだと二人は分っていた。


「…キラ、何が、あった?」


ようやくアスランから吐いて出た声は掠れていて途切れ途切れで、彼の心境を如実に伝えるかのようだった。




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genre : アニメ・コミック

訂正です(悲)

お気づきの方もいらっしゃると思いますが「明日へ続く光(仮)」5の冒頭大嘘を書いていまして(汗)訂正しました、お詫びいたします。
詳しくは続きを読む、で。

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「明日へ続く光(仮)」6~GSD#50自己補完小説

レイを医務室に連れて行きベッドに寝かせ医師に額の傷を見てもらおうとした途端、その白衣とその場の雰囲気に過度に反応したのかレイのひきつけに似た錯乱状態が突如始まった。
「わあ~!!」
ベッドの上ではぁはぁと荒い息を吐き出しながら体を折り曲げて何かにおびえそして胸を掻き毟る動作が尋常でないレイの様子を引き立てる。時折ひきつけを起こしびくびくと背中が大きくしなる。
その現場に居たものは面食らってレイから手を引いた、がキラ一人だけ一度は驚いて離した手を今度はレイを抱きこむようにして震える体を支えた。
「大丈夫だよ、レイ」
そういってまるで小さい子供をあやすように、キラは優しく背を撫でた。
「ああ、俺は・・・」
「大丈夫、だから」
そう言って嘆き暴れる彼を抱きとめるキラ、そしてその相手がレイと言うことがアスランにはどうにも理解ができなかった。始めは暴れ自分の胸をかきむしっていたレイがキラの背中に爪を立てたりひき毟ろうとするのを見ていられなくてレイの行動を制止しようと間に入ろうとするアスランを目で制してキラは
「レイ、横になっておでこの怪我見てもらおうか」とその耳元で優しく告げて抱きつく格好のレイの顔を上げさせた。どの程度の怪我かを確認する意味も込めてそっと額にかかる髪をかきあげようとしたとき
「ギルは、死んだ、の?」
キラの眼を見てそう訊くレイがまるで幼子で哀れで仕方なかった。縋りたいのだろうか、自分のしてしまったことを認めたくないのだろうか?しかし自分が壊してしまったものの大きさに気づいている、撃ってしまったことを彼自身戸惑いそしてその事実に、メサイアから脱出し今まで放心してしまっていたのだから。
「僕が…殺してしまった」
みるみる溢れる涙と謝罪は途切れることは無かった。
「うっ、う~ごめんなさいギル」
レイが致命傷を与えたことをキラははっきりと明言できなかったし彼自身がその手ごたえでわかっているだろうとも思っていた。そしてあのメサイアの司令部は既に落ちてしまっていることをまたここで念を押す、それもできなかった。
その胸で泣く彼をキラは抱きとめるしか術は無かった。

そしてその様子を間近で見守っているアスランにはまた衝撃が訪れた。

(議長が、死んだ・・・?それもレイが?どうだって?)
メサイアが落ちたということは議長はそういうことになったのだろうと思ってはいた。
解り合えないだろう、それはミネルバから出た時覚悟はしていた。一時は信頼し彼の剣として平和を求めたアスランも巧みな言葉の向こうに見えたものに疑問を感じ結局は袂をわかつ事になった。だが議長は自分のことをよく理解し心地よく感じていたこともまた事実であった。だからこそこうなるかもしれないと頭ではわかりその時を迎えても冷静でいられるだろう、と思っていたが思いもかけずかなり落ち込んでいる自分を自覚していた。
がしかしレイが?殺した?というのだろうか?これにはかなり動揺した。
あれほどまでレイは議長を信頼し裏切りは許さないと発砲し、MSで追跡し容赦なく撃墜を促し。アスランよりも付き合いも長く同じアカデミーの同期であろうメイリンでさえも問答無用で冷酷に対応したのはすべて議長のためだったとも言えるあの夜のレイの鬼神のごとき形相だけがアスランの記憶に新しかったことも驚愕に繋がった、だがしかしそれにしても。
(レイが、撃ったのか?キラ!)
そう訊こうと思った瞬間に、泣き崩れるレイの口から発せられる言葉に、彼の変節が本物なのだと唐突に理解してしまった。

「お・・・かあさんは?」

虚ろにそう呟く彼が誰をそう呼んだのかは解らない、ただキラはその言葉に胸をさされた気がした。
多分、生まれてこの方自分たちよりは短い時間で彼はこの姿まで成長したのではないかと、想像する。
テロメアが短い。
それが具体的にどの程度、普通の成長を遂げていく自分たちとの時間的差が生じているのかはわからない。だが、全ての感情が切れてしまったように見える彼が本能的に自分を庇護してくれる憧れの存在をまだ本当は幼い彼がそう呼んだのかもしれない。
いや、もしかするとあの時、レイが議長を撃ったときにその場にいてキラに自分の息子のことを話したグラディス艦長のことを何か錯覚してそう呼んだのかもしれない、レイの想像した自分の母親像として。
宇宙に唯一人の存在のキラとレイ。
こうまでも違ってしまったことに何も応えることはできなかった。
そのうち、キラにしがみついたまま泣き疲れたように眠ってしまったレイには若者にはないような疲労の濃さが寝顔に伺える気がする。やはり彼の時間は早く進むのか、と落胆する思いであった。
ベットに寝かせ、切れた額を診て貰い、ようやくキラはアスランに向き直った。

怒りと不満、困惑、そして傷ついた瞳を隠すことを忘れた彼がいて、キラは自分がそうさせてしまったのだろうと思い睨むように自分を見るアスランに何から話せばいいか、思わずため息を吐いた。
ここまでの自分勝手を自覚しているが故に、どう切り出せばいいかも解らない。話したいことはたくさんある、隠していたこともあるからそれらを明かして自分を認めてもらえるか不安でもあった。
「ドクター、彼が起きたらさっきと同じようになるかもしれない、そんな時は僕を呼んでください」
そういい置いて、アスランを目で促しながら医務室を出た。

真実を告げずにここまで来た自分。
そのことがアスランをまた傷つけるだろうと恐れながらキラはアスランと改めて対面した。












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genre : アニメ・コミック

「明日へ続く光(仮)」5~GSD#50自己補完小説

レクイエムが配備されていた元連合の基地でありジブリール亡き後ザフト所有となっていたダイダロス基地は、レクイエム破壊後直ちにオーヴ艦隊が進攻し制圧。メサイアの陥落によりザフト軍の戦線撤退を受けオーヴも戦闘行為を即時中止し、派遣軍はその基地に集結することとなった。
オーヴの艦隊も計2回のネオジェネシスの発射により損傷した艦も多く負傷者も続出していた。ザフトの撤退を受けて航行に問題のない艦艇は救援活動を、MS各機は救助活動を行いつつ月へと進路をとった。
AAもオーヴ軍の召集に呼応、やがてミネルバの撃沈地点に差し掛かる。順次退艦していく様子にブリッジでは人知れず、皆敬礼をしていた。
またそこから幾分か離れた地点でムウの操るアカツキは、アスランと対峙していた2機のザフト軍所属の2機のMSを発見。それから発せられる救難信号にアカツキを降下させた。
そこには、2人のパイロットが身を寄せ合って救助を待っていた。

ルナマリアは降下して来たMSが自軍のMSではないことは一目瞭然であり驚きを隠せなかった。しかし救助の手が敵軍だからといって躊躇していることはできなかった。このままではシンが危険だったからだ。
生き残ったからにはこれからも生き抜く、ルナマリアはそのために手段は選ぶつもりはなかった。このMSは間違いなくオーヴ所属であるが一刻を争うのだ、頼るしかない。「卑怯者」と後で罵られようと。

「早くシンを!お願いします」
ルナマリアは頭を下げた、膝の上のシンはだんだんと動きがなくなっていって、涙も涸れ今や瞑目したきり呼びかけても反応がない。撃墜された時に損傷していたパイロットスーツはできる限り点検して、ヘルメット部分の損傷には応急テープを貼った、しかし機密性には何ら問題がないようだがパイロットスーツについた微小な損傷がどういう不具合か低体温を招いたらしい、このままではシンの生命の危機だと判断できた。

あの時、月面が噴火するかのごとくに立った火柱を二人は抱き合って見つめた。
撃墜のショックで気絶していたシンが目覚め、二人でメサイアが放たれる前にあれが破壊されたことを知って泣いた。

ルナマリアには安堵の涙だった。
もうあの大量破壊兵器でプラントが焼かれ吹き飛ばされたように、地球上のどの国も焼かれることはなく少しだけ滞在したことのあるあの南の国、オーヴもその難を逃れることができた。だからと言ってあの国に自分としてそう思い入れはない。プラントにとっては”敵”と定められた国である。けれどプラントは撃たれた、だから撃ち返す。いくらプラントの方針に従わないからといってもそんな後味の悪い報復のような攻撃、撃った本人にではなくオーヴの国民に撃ちかえすのはルナマリアには心が痛む出来事ではあった。何しろ自分がもっとしっかりしていればジブリールを逃さなければプラントも撃たれることもなく、このような大量破壊兵器が飛び交う戦いは避けられたかもしれないという自責の念が強かったからだ。
だから、実際あの火柱が立ったとき
『オーヴは撃たれなかった』と思わずシンに告げた。自分が安心したように彼にもそれをあげたかった。
シンも口ではどう言っていても故郷がなくなったり焼かれたりすることは辛いことだろうと思ったからだった。それが回避できたことを伝えたかったのかもしれない。
けれど、本当は?
シンは何を思っていただろう。

あの号泣は、自分と同じ安堵の涙だったのだろうかと。ルナマリアは自分の膝に沈むシンを見下ろしながら不安になってきていた。

「待っていろ、すぐに助ける」
金色のMSはそっと手を差し伸べルナマリアは月の軽い重力の中、シンを抱えてその手に乗る。大切に大切に包まれて、少し離れた所に駐留するAAに向った。


(ああ、AAに行くのか)
ぼんやりとシンは今の自分の状態を把握していた、しかし抵抗する気は起こらなかったしそもそも体が動かなかった。
徐々に冷えていく体がもたらした冷静な思考能力。
(今まで自分は何をしていたのだろう)
そんな空虚な自分を抱えていた、頭の中は、真っ白に近い。しかし先ほど夢の中に現われたステラの残像と戦闘中のアスランの言葉だけが妙にリアルに再現されていた。

『ステラ昨日もらった嬉しいの…』

昨日…、昨日は過去。
皮肉にも君は死んで過去を取戻したのかもしれない。そして本当の君を取戻した。だけどそれは君を本当に解放できたというの?
そんなの、認めたくないよ。


シンは自分の過去を思い浮かべる。
何の事件も無い、それが退屈だと思っていたあの日常は本当はとても幸せだった普通の暮らしで、それが突然途切れてしまい。いつまでも過去を懐かしみ、取戻したいと願い取戻すことができないとわかりながらいつまでも縋っていた昨日。自分と同じような、ステラのようなそんな人たちがもう生まれないようにと気負っていた今まで。
だがそれも皆大切な自分、その過去があってこそ自分は今までこうして戦ってきた、それがどうしてこんな風になったのだろう。

『もうお前も過去に囚われたまま戦うのは止めろ』


あの人の言葉。
でも俺は…、この過去があってこその俺だ、こだわって何故悪い。どうしてわかってくれないのだろうどうして俺を認めてくれない、過去は捨てられないのだ、過去も俺であったのだから。
過去を捨ててしまえば俺は俺でなくなる!ステラのように。

ステラが、記憶を過去を持たない彼女が本当のステラではなかったように!

『そんなことをしても何も戻りはしない』

取戻せないことはわかっている、ただ皆が戦わずに住む世界を手に入れたい、そんな未来を望んでいるだけなのに。
『未来まで殺すつもりか』
それをわかってくれないあんたが腹立たしい、だからあんたを倒せば俺は手に入れられるかもしれないと思った。
自分の欲しいものを。ルナマリアを傷つけてでも・・・。

強ければ何も捨てないでいいと思っていただけだ。

『バカヤロウ!』

(俺は・・・何を・・・)

手に入れられたものは何だったのだろう?

過去を背負ったままに苦しいけれど今もそれと戦いながら、でもこれが俺なのだ。シン・アスカという人を作ってきた過去を手放しはできない。でもこの過去ごと俺は明日に生きたい。
そして俺が俺として生きていける戦わなくてもいい自分が欲しい。
それを護りたい。自由な明日を手に入れて───。自分が自分として生きられる日常、それが欲しいから・・・戦った。
(俺を認めて欲しい、否定しないで欲しい)
昨日もそして今日も、俺は俺として生きていた。強くあろうとしてことで過去をやり直せればと思った俺は、強い自分であろうとした。強い力で今を作ることも必要だと思ったからこそこうして力を得た。

『お前が欲しかったのは本当にそんな力か?』

デスティニーも破壊されレクイエムも、メサイアも。
いくら強力でもそれはそれでしかなかったのか。
何も作られはしないのかも知れない、力はただそこにあるだけで。
明日もそこにあり続けることはできないのかもしれない。
力で切り開けると思っていた世界は、もう・・・。

(何が欲しいか少しだけわかった、から)

ポカリと空いた心の穴は俺の支えだった力の拠所。そうしてやっと気が付いたものに涙が溢れ出て嗚咽は止まらなかった。
そしてルナマリアを、戦ってきた今までの過去の自分を哀れむように、掻き抱いた。

『だから明日、明日ね』

それでもこうして俺は生きている、そうだよね、ステラ。未来を望める俺がまだいる。

だから。


あの人に、会いたい。
会って未来を、俺の明日を認めて欲しい。


薄れる意識の中シンはそう願うのだった。




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「明日へ続く光(仮)」4~GSD#50自己補完小説

確かに様子はおかしい、あの冷たく睨みつけてくる瞳も今は閉じられている。
だがそれが彼の作戦であったとしたら。
そのぐらいはやる狡猾さはあるはずだ。
アスランはレイに対しては厳しく接する必要があると感じていた。何しろあれ程議長を信奉し、シンに影響を与えたのだ。そして正論とも言える言葉は全て議長がその場にいるかのような論じ方で圧倒し納得させていく。その志は自分たちとは対極にいるように感じ交わることはないと思っている。だからこそ、ラクスを狙い、そしてその守護神たるキラを狙えるこのエターナルは、彼らにとっては一発逆転の格好の場ではないかと舌打ちした。
「キラ、彼を拘束しろ」
「どうして?」
「危険だ」
「大丈夫、彼に戦意はない。早く怪我を…」
「何が根拠でそう言える」

そう訊かれ、キラは自分のレイに対する同情がこの行動の根底にあるとも解っていた。
そして、この複雑なレイへの感情がわかるのはキラ自身と、もしかすると…ムウ。
しかしムウとはその意識が違う。
いうなれば被害者側と加害者側、そういった立場に置き換えられるのかもしれない。
ムウは自分の父の愚かな欲望が世界に及ぼした混乱を自分の責任のように感じている節があった。
別にムウ自身に罪はない。
だがクルーゼと対面した時にムウは原因となった父の息子として「クルーゼを止めたい」という決着の方法を選択していた。
だからまたこのレイという存在を知れば心を痛め彼なりの「責任」を取ろうとするのかもしれない。この意識はキラとは違う。
キラはクルーゼとは同じ位置にたっていた可能性があった、だが自分だけはいいように事が運んでしまった、少しの偶然がそうした。
本当に紙一重だったのだろう。
自分は成功体としてブルーコスモスに狙われはしたがこうして生き残り、我が子のように慈しみ育ててくれた夫婦がいて何があろうと変わらぬ愛情を注いでくれたし、同じ遺伝子を持って生まれた姉、こうして無条件に底抜けに自分を護ろうとしてくれるアスラン、同じ目標を持ったラクス、他にもキラをキラだとありのまま認めてくれる人がたくさんいた。あの男のように孤独ではなかった。

でも、このレイは?
きっと拠り所にしていたと思える議長はもういない、皮肉にも彼の手によってそれを壊してしまった。
そうなれば彼を支えられるのは誰だろう、ミネルバにはそういう人がいただろうか。彼の秘密を知って尚レイを受け入れることのできる人間。

いないような、気がした。
だからこんなに親身になるのかもしれない。

彼に、未来を、光を与えたかった。
きっともう時間はない。
誰でもいいから彼自身に彼として生きる希望を明日を歩んでいける支えがあればいいと思った。
傲慢かもしれない、迷惑かもしれない。
間違いなくキラは自分と照らし合わせた時に、あまりの差に耐えられなかった、だからやはり同情に違いないのだ。
独りよがりだ、間違いなく我儘を通していると自覚していた。
だけど。
子供のように、いや実際子供なのだろう彼を放っては置けなかった。
アスランはキラがどうしてレイをつれてきては庇うのかその根拠はわからないだろう。
2年前に知った自分の出生の秘密は誰にも正確に伝えていない。漠然としか彼らに伝えていなかった自分の過去を打ち明けこの行動の根拠を今話するべきなのだろうなとキラは覚悟を決めた。
自分をそして今している行動を受け入れられなくても。
ただの感傷だと、レイをつれてきたことを批難されても。
これは自分の責任で決着をつけるからと、心の中で決意していた。

人は皆、幸せになる未来を求めてもいいはずだから。


「…僕も、キミにいや、皆に伝えたいことがある。彼のことを含めて。まずは彼の治療と彼を休ませてあげて」
凛とアスランの眼を見据え、ここで無体なことをするつもりなら自分とて黙ってはいない、と無言の圧力をかけて、キラは一歩を踏み出す。まるで自分が傷つけられたかのような手負いの獣の様相だった。
そこまでさせるものは何なのだ。アスランはそのキラの読めない感情に腹が立った。

メサイアで議長とは対面したはずだ、何があってこのレイを連れてきたのか、レイが今何故こんな状態なのか?
どうしてここまでレイに肩入れしているのか。そしてキラ自身も恐ろしいほどまでに気を張り詰めているのは何故なのか。

こんなことは今までなかったから特にその態度に焦りを感じる。
それに、先の大戦後期キラ自身に何か重要な秘密ができてそれを今もまだ自分の口からは誰にも言おうともしない、その隠し持つ何かとレイが関係しているように感じて余計に苛立つ。
アスランは何も知らない、いや誰もはっきりとは知らないはずなのだ。なのにあの2人には同じ空気がある。

その疎外感がアスランには痛かったのだ。
「…くっ」
キラの瞳に温度を感じない。
表面上は穏やかでいるけれどもその奥底でまだ燻っている何かがキラの余裕を失わせていくのか?
その原因がレイ、か?

くっそ、と歯軋りした。
自分以外のものがそのポジションにいる、そんな気持ちが感情を凶暴にしていくのをきっちりと感じでいた。
だからこそ強引に最低限、譲れない意見はここではっきりと告げておく。
「監視はつける、何か動きがあれば即捕縛隔離だ」
そう言い添えて反対側からレイを支えた。

レイはそれがアスランだともわからない様子でその青い瞳には何も映ってはいなかった。




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「明日へ続く光(仮)」3~GSD#50自己補完小説

レイの立場は、捕虜だ。そういうことになるだろう、明確にするならば。
しかし、拘束もしていなければ今後キラはそうするつもりも無い。
アスランは何があったのかを早く問い詰めたい気分だった。そして何か不測の事態から早く遠ざけたい、キラを害されるわけには行かない。
できれば向こうのコックピットに乗り込みたい気分で勇んでいた。
しかしそれを許すはずも無いだろうキラは危機感もなく穏やかだ。

撤退の発光信号が上がり、オーヴ軍は即座に戦闘行為の中止を出しており、それに付随する軍隊からの戦闘も既に中止されていた。
人道的立場に立って救助活動も行われはじめていた。


「エターナルに着艦する」
キラはそう言ってジャスティスの横をすり抜けた。アスランとしては腹立たしさを抑えきれないままにフリーダムの後を追って着艦体勢に入るしかなかった。
そこには、ラクスもいるからだ。
その危険性をキラが知らないわけはない、どういうことなのかキラの行動がつかめずアスランは混乱を深めた。そんなアスランをよそにキラはスムーズにフリーダムをエターナルに着艦させた。


アスランがどういおうと、キラにはこのレイがもう戦意の欠片も無いことがわかっていた。
多分、気力もなければ意味もなくなったはずだ。

フリーダムが整備ドックへ向い固定される間、
「レイ、大丈夫だからね」
そう、優しく子供をあやすように言い添えた。涙に濡れたその純粋な瞳をキラは哀れに思う。

どんな心境の変化が彼に起こったのだろう。
信じていたものを撃つ、その凶行。
奇しくもキラを庇うことになった、それは衝動だったのか何かからの開放を求めての行為だったのか?

『彼の明日は…?』
そう呟くようにでもしっかりとその口から出た彼の真意は何だったのだろう。
キラにはわからない事づくした。
今のレイを見る限り信じていたものに裏切られたような目と落胆、そして奇妙に安堵した雰囲気の両方を感じていた。
自分に絶望していた今までから何か新しいものを見つけたようなとても新鮮な驚きと、自分が立つために生きていくために信じて疑わなかったものが簡単に崩壊して、更にそれを滅茶苦茶に跡形のないまでに自らの手で壊してしまったかのような、そんな絶望が同居し彼を困惑させ失望させている。
だけれど、どちらかというとその失意の方が多くしめているだろう彼の中の僅かな希望の存在、キラはそれを感じたからこそ連れて来た。

2年前、メンデルで対峙したラウ・ル・クルーゼの怨念。
自分の生んだ世を厭い、人類を憎み恨み、破滅へ導くことが己の存在を証明するのだといわんばかりに暗躍し、短いときを憎悪だけで駆け抜けた男。
レイは多分その男と同じ遺伝子を持っている。
そして彼と同じように、世界を恨むことで身を保ってきたのか?
同じように人の欲望が作り上げた存在のはずなのに、普通に生きる、生きることができるキラを恨んできたのか?
それはレイの意志で歩んできたことだったのかを、キラは知りたいと思った。
あのメサイアでの、デュランダルとの対話を聞いていたはずの彼。
本当に恨んでいたならキラには隙はありすぎるほどあったはずでいつでも背後から撃てた。しかしあの銃を構えての非建設的な対峙に何を思い、何を感じたのだろう。
一発の銃声が答えだったのか。
とても信頼していた人への発砲は何を示したのだろう。

短い時間の中で生きる彼にとってこの行為が意味することは、多分。
キラはその気持ちに賭けた。
だからあのメサイアで置き去りにして死を選ばせるの気もしなかったし、ザフトに帰ればその処罰は最たるものになる。
だから・・・。


そしてこんな風にキラを動かした最大の理由の一つ、タリアの言葉が甦る。
『彼の魂は私が連れて行く。彼にとってのこの戦争の原動力、その後のプランを考えるに至った原因は多分、私だから。でも彼は…』

この言葉の意味は明確にはわからなかった、しかし幸せそうに見詰め合う二人からそれぞれに目指した世界があったのかもしれない、夢を見たのかも知れないと思った。それが議長の言う新しい世界への思想に繋がって、いつしか二人の道は違えたが最期にまたこうして歩み寄れたのかもしれないと思わせた。
本当なら、どうなっても生きることを提案すべきであった。
タリアの子供のことを聞いた時、特にそう感じた、そしてタリアが自分の子と同列にレイのことを気にしているそぶりに、子供たちのために生きるべきだと言いたかった。
だがキラには、デュランダルとタリアをつれてくることはできなかった。

二人は、もう過去しか見ていなかったからだ。

苦々しい気持ちを振り切って踵を返したところに、その彼がいた。
銃を持つ手を震わせて泣き崩れ「ごめんなさい」と繰り返すレイ。その瞳が幼くて、まるで迷子になった幼子が親を求めているかのようで
「レイ」
と呼んでみた。負傷した額からまだ血が流れていて、涙で顔は濡れていたけれどひどく透明で純粋な、子供だった。


『その子を、お願い』

その声は爆音にかき消されが、キラの耳にははっきりと伝わった。
死んでいく二人の遺志として。

レイを頼む、と。







フリーダムのコックピットから連れ出して、クルーがぎょっと驚くように身を硬くする。自分では歩けないほどに憔悴したレイの肩を抱いて
「負傷しているから医務室へ連れて行く、大丈夫」
と言いつつ身構えるクルーを安心させようとする、だが
「キラ!」
行く手を阻んだのは、銃口をレイに向けたアスランだった。



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「明日へ続く光(仮)」2~GSD#50自己補完小説

柔らかくしなやかなその手はレイの背を撫でている。
すすり泣く様に震える肩、嗚咽を押さえ込むのか時折ぐっと盛り上がる背中をぽんぽんと軽く叩いてまるであやすかのような仕種。
そんなキラをあからさまに見せられて胸中は複雑だ。
ムカムカとこみ上げてくる感情も確かにあった。
しかしそれを凌駕する信じられないという驚愕に、自分の目を疑いできる事なら目を擦りたい気持ちで瞠目した。


あの夜。
レイとは初めからお互いは相容れないものだと知った。銃撃戦の後味の悪さ、それを今まざまざと思い出す。
隠そうともしない、敵意。
裏切り者と決め付けその裁きは”死”あるのみと決め付けて実行した瞳。

その彼が、どうして。

だがもっと気になっていたことがある。
直接知りもしないはずのキラへの憎しみを時折感じていたことだ。フリーダムへの攻略の方法を伝授するかのようにシンとのシュミレーションに没頭していたレイ。ステラを失ったシンの行き場のない感情をフリーダムを叩くことで昇華させようとするあの激情を支えていたレイに彼自身の私情があった、だからAAを敵だと世界を混乱させるものだという正論を吐くレイにも違和感が生じていたことも否定できない。
あの時から不穏な空気は感じていた。
レイは、キラを憎いのだと。
何の根拠も無い勘だ。
だがその勘が、オーヴを出て月に向う途中AAの部屋でキラとミネルバであったことを話したとき吐いてでた。
レイとはろくに話をしたこともなく、話せば有無を言わせない巧みな言葉に議長の影を感じずに入られなかった。だからこそ無意識に「議長とレイ」を止めなければとキラに打ち明けていたのだが。

伝わってはいなかった、いや伝わるわけがない。
キラ自身、レイを知らなかったのだろうし自分も積極的に彼のことを言ってもいない。それが今こんな風になって返ってきたのだ。


そんな複雑な感情を抱くやはりどう考えても相容れないと思えるレイが今、キラの横にいる。

焦る、というような生易しいものではない。
恐怖だ、何かわからない恐怖を感じて体が冷えていくのを感じた。
「キ・・・ラ、お前そいつは!」
危険だ、お前を殺すかもしれない!と搾り出そうとした瞬間、小首を傾げたキラが
『大丈夫だよ、アスラン』
と何の根拠も感じられない調子できっぱり言った。
「ばっお前」
お前は何も知らないから…!と言い返そうと、今までの色々な自分の感情を吐き出してしまおうとしたとき。

ザフト軍の撤退の発光信号が遅ればせながら暗い宇宙に放たれたのだった。





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「明日へ続く光(仮)」1~GSD#50自己補完小説

ジャスティスとアカツキがレイクエムを破壊し、行く手を阻むMSを払いながら猛スピードでメサイアへと急行している最中にそれはもう爆発、崩壊の様子呈していた。

「キラ・・・!」

フリーダムがメサイアへ入ったのをアスランは知っていた。キラがTEXTでの通信を繋いできたからだ。

一言
「議長に会いに行く」
と書かれてあった。


キラには必要な過程なのだ。議長と会う、直接話をすること。
本当ならば、もっと早くに話がしたかったのだと思う、キラもそしてラクスも。こうして力のぶつけ合いになった今しかその機会が巡ってこなかったのはなんとも受け入れがたい事実なのかもしれない。

何を求めたのか。

キラは議長がディステニープランで見る未来の夢をそれによって見える希望を、訊いてみたいとポツリと零したことがあった。世の中が平和になる、人の欲望や負の感情による争いがなくなるから、と言ったそんな建前ではない。彼の本当の望みがあるはずなのだ、と。
人が持つ欲望を、自由な未来を求める当たり前のことをなくしてしまう世界。
じっととどまっていろという、彩のない世界に。
戦争や諍いを無くす、そのために必要なのは心を無くすことか?どうしてこんな考えに至ったのか?

それを知りたいと言っていた。なにがどうしたからこのような思想に至ったのかを知って歩み寄りたかったのか?
今、言葉を交わしたからとそれがわかるわけではないだろうし、分かり合えるわけも無い。
議長がキラに正直に話すことも勿論ないだろうとアスランは思うし、キラにもそんなことはわかっているのだ。
しかしこれからの世界にはこの対話が不可欠で、彼が求めた世界のプロセスを理解していることも、掴もうと努力することも大切なのかもしれない。
これからまだ人であり続けることと戦い世界を護るために。


だから行ったのだキラは。危険を顧みることなく仮令、そこで撃たれたとしても、キラは自分が納得できるまでやり遂げどんなに危険だと説得し止めようとしてもそれを譲ることはない。
だからその危険な行為を本当ならば共にと、アスランは思っていたしするつもりだった。
だが結局、メサイアの爆発をこうして外から見ているしかできない自分の歯がゆい思いをジャスティスを駆けさせることで押さえ込むしかなかったのだ。とても抑えきれるものではなかったのだがそれしかできない現実があった。

無音の空間に、一際大きく迸る爆発。

その背後、キラの操るフリーダムが飛び出してきた。

アスランはその秀でた視力でそれを確認すると一目散にジャスティスを寄せた。

■■明日に続く光(仮)■Ⅰ■


「キラ!」
思わず通信回線にそうぶつけた。視界に入ってきたフリーダムに損傷はない、操縦しているのは誰なのか現時点ではわからないがその操作はスムーズだ。アスランはそのフリーダムを見る限り迷いのない存在感を感じさせるその動きにキラが乗っていると確信できていた。
フルスロットルで近づいていたジャスティスに制動をかけ、思わずフリーダムの肩に自機の手を触れさせた。まるで自分自身がキラを労るように。

「…キラ」

名前しか、呼べなかった。
「うん」

小さく、接触回線での返事、声だけが響くようにコックピットに充満する。
その声音だけでキラが何を見てきたのか、何に心を痛めているのかがわかってしまった気がした。

「無事な顔を見せて?」
回線を繋げて、まず顔を見たいと思ったなのに向こうの映像は入らない、不安が押し寄せる。何かあったのか?怪我をしてそれを隠しているのか?それとも。
「キラ、何かあったのか?早く映像を繋げ!」
と声を荒立たせてしまう、これも戦闘で高揚した気持ちとキラへの心配が募った結果の焦りだった。
しかし、キラは普段と変わらない声で「けがなんてしてない、大丈夫だよ」とこともなげに言った。

「なら早く映像をつないでくれ!」


アスランの焦りを受けつつキラは目の前の、崩壊していくメサイアを見ていた。この様子にどの陣営のMSも既に戦意を消失したかのように動きが緩慢になっている。勿論戦闘開始から呼びかけ続けたラクスのメッセージの効果もあっただろう。
自然と、戦闘行為が終了されていく。
その様をキラは暗澹たる気持ちで見届けた。
あそこには。
自らそこを己が墓標と決めた二人がいる。
結局、欲しいもののために、彼も戦い何かに抗って生きていたのだと漠然とわかっただけだった。
そして・・・最後に託されたもの。

すすり泣く声が憐憫を生む。
膝枕をしてやった。
彼は親にはぐれて怖くて震え泣いている子供のようにしくしくと体を縮めている。
彼の頭をそっと撫でた。
その後自分より少し大きい体を引き上げてしっかりと抱きしめた。


そうしてしばらくしてやっと心配性のアスランから繋がれた通信を、こちらからも繋いで無言のままに、今の自分を彼に伝えた。

いや、その様子をみせたのだ。

「・・・!キラ」

やっと無事の確認できたキラの姿の横。
顔はキラの胸に伏せられていたがその透き通るような金髪の主には並々ならぬ感情が渦巻く、言ってしまえば気に入らない、銃を向けられ撃ちあい激しく言い争い、解りあえぬままに敵対することになった後輩のザフトレッドがいた。

「レイ!」

アスランは激しく狼狽する自分を自覚していた。

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『光の標』~運命49話アスラン独白風味

『許しませんよ、ギルを裏切るなんて』

───時々、あの夜のことを思い出す。
裁きを下すかのような、神官の瞳。
高貴なブルーが睥睨する、その様子を俺は異質なものとしか受け取れなかった。
逃げるのだと、あいつは認知したとたんそこからはもう言葉など通じなかった。打ち放たれる銃弾にもちろん容赦はない。
それほどまでのひたむきさは何なのだ。


■■光の標■■

人それぞれ、信じるものは違う。その価値も、万人が同じ評価など下さない。十人十色の人々がこの世界を構成する。
同じものなど、ひとつとないそれこそがこの世界の理。

だがそれを許さないと、
あの瞳はまっすぐに裁く。

まるでたった一つしか知らない。
それしか知らないからそれだけを信じている。
無垢な、真っ白な子供の価値観で。

幼い子供が向ける親への絶対の信頼を、絶対の庇護の元で何も疑うことのなく己が価値観だけを至上とする、それを否定されて、怒りのやり場もない激昂が銃を乱射させたような、そんな雰囲気だった。


そうか、子供、なんだ。


唐突に降って来た答え。
それは己の未熟さも浮き彫りにして、自分もまだ子供だったのだと再認識させられた。そして胸に去来する苦い思い。

(俺は子供を置き去りにしてきたのか?)

もしかすると善悪も、人の心の温かさも、優しさも。
世界がどうして眩しいのかさえも。

何も知らない清澄な心のままで。

人と人の係わりや成り立ちも愛し合うことも。
愛し合える愛しささえも。
何も知らない子供。

言葉だけが成熟しているのか、かの人が絶対だというのなら。
巧みな言葉に引き混まれ、狭い世界で選択や思考することさえ知らず。
植え込まれた正しさだけで世界を見ていたのなら。

そしてその盲信がシンにも波及するほどに、その心を掴んでいったとしたら。


俺は───。





「アスラン」


蠢くような思考の闇に一筋の光が見える。

俺の光標。

もし、キラが5年前プラントに来ていれば。
もし、オーヴからプラントに上がる俺がキラを伴っていれば。
もし、連合に加盟したオーヴに居場所が無くキラが自らプラントに来ていれば。

同じ立場に立っていれば。
俺は子供のままに彼らと同じように受け入れていた可能性があった、過去。
そして現在。

でも、キラがここにいてくれた。
本当にいいのかとまっすぐな瞳で俺に問いかけ、自分自身を追い込み、苦悩して。
その姿が俺を導く。
俺もまた、キラと同じように悩み自分に問いかけキラに問いかけ答えを出すことに躊躇い遠回りしながら歩んできた。

光がそこにあるから。


「行こう、キラ」

「うん」


置き去りにした子供らを導く光に俺はなれるだろうか。
細くても揺れない強いまっすぐな光に。


先を行くフリーダムのその鋼鉄の翼に太陽光が反射して一筋の光となって眩いほどの残光とともに突き進む。



どうか、彼らにも光を。







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『光を我に』 #49レイ独白

俺の中に脈々と流れる憎悪の念。

遺伝子レベルにまでそれは染み付いているのかもしれない。

繰り返される。

もう一人の俺からの、内なるメッセージ。


■■光を我に■■


もう一人の俺も同じように恨み、妬みながらこうして過ごしたのか。
人の何倍もの早さで駆け抜けていく時間の中で焦り、逸り、何もかも諦めて絶望し。
それでもこれだけは成し遂げるとまた立ち上がり、血反吐を吐いて今ここにいる俺のように。
だが、どんなに望んでもどんなに抵抗しようとも指の間を零れ落ちる砂のように、さらさらとこの命は日々冥府に近づく。
近づくにつれ聞こえる声。
先に逝ったもう一人の俺が、遺伝子を通して囁く。


「キラ・ヤマト、お前だけは許さない」と。


それは俺の声になって、俺の意志になった。


飽くなき人の欲望が見せた夢。
それは現実となってそこにいる。
同じくして生まれた奴だけが光の中にいる。

俺にはそれだけで、理由になる。

本当はどうでもいいプラン、どうせ俺には死後の世界なのだ。
人がどうなろうと構いはしない。
だが俺の、俺たちのような存在だけは二度とは生まれない世界になるだろう。
それでいい、それならいいだろう。
その世界には人の欲望だけで生まれてきた者はいらないのだ。
だから。


「お前も許さない」

光が堕ちる瞬間をこの手で。
それを俺の生きた証に。


「レイ・ザ・バレル、レジェンド発進する」


そうしてこの憎しみの呪縛に終止符を打つのだ。











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